企業不祥事とコーポレートガバナンス・内部統制

 東芝は、2015年2月に過去の不適切な会計処理が明らかになり、世間を大きく騒がせました。この不適切な会計処理により、東芝は上場廃止になるかとまで噂されておりましたが、過去の有価証券報告書の訂正と金融庁への課徴金73億円の支払い等々により、従来の東証1部から東証2部への降格で済みました。

 東芝の不適切会計に限らず、企業が不祥事を起こすと、一般的にガバナンス・内部統制の強化を行い、企業不祥事を防ごうとします。ガバナンスとは、株主・顧客・従業員・役員が経営者への監視を行う事により、企業不祥事を防ごうというものであり、内部統制とは経営者等の管理者が従業員の業務を監視する仕組みを作ることで、企業不祥事を防ごうとするものと整理できます。なるほど、この2点を強化できれば、企業不祥事は防げそうなものです。

 東芝も2015年2月に発覚した不適切会計により、痛い目に合い、ガバナンス・内部統制の強化を行ったはずです。それにも関わらず、東芝は2020年2月14日に子会社での循環取引・架空取引があった事を明らかにし、連結売上高を215億円取り消す等々の修正を行うと公表しています。東芝が公表した資料からは、子会社は循環取引・架空取引に対し、主体的・意図的な関与、組織的な関与は認められませんでした。としています。換言すると、「東芝グループは、良くわからないうちに、循環取引・架空取引をしてしまいました。」という事になります。これが事実の可能性もありますが、そんな事言われても世間の人は違和感しか感じないのではないでしょうか。それに、良くわからないうちに、循環取引・架空取引を行ってしまう様な会社が上場会社であって良いのでしょうか。

 確かに東芝全体の売上(年間 約3.6兆円)に比べれば、今回発覚した循環取引・架空取引による売上高の修正額215億円は、微々たるものと言えるかもしれません。しかし、215億円という金額自体は、誰が考えても巨額です。それに、東芝全体の財務諸表と比べて、重要性の低い子会社であれば、巨額の不正が発生しても良いわけがありません。今回の企業不祥事は、B to B 取引であった様ですが、仮にB to C 取引であったら顧客に大きな損害を生じさせ、東芝の信用は大きく毀損していたのではないでしょうか。

 企業不祥事が起こると、新たなガバナンス・内部統制の強化が行われ、担当者は作業をガバナンス・内部統制の作業をこなす事で手一杯となります。換言すると、担当作業をこなす事が仕事であり、担当作業以外の出来事は問題ないという発想に陥ってしまうのかもしれません。企業不祥事を防ぐには、確かに細かなガバナンス・内部統制の作業が必要なのかもしれません。しかし最も必要なのは、ガバナンス・内部統制が何のために存在するのか、世間の視点・ステークホルダーの視点から再考し、ガバナンス・内部統制の趣旨を意識し続ける必要があるのではないでしょうか。

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