IFRS-16号「リース」が企業価値評価に与える影響

  IASB(国際会計基準審議会)は、2016年1月にリース会計の新基準であるIFRS16号「リース」を公表しました。IFRS16号の適用開始は2019年1月以降に開始する事業年度からであり、一般的な3月決算の会社では2020年3月期から適用開始となります。

 従来、日本基準とIFRSとの間に大きな差異はありませんでしたが、IFRS16号「リース」の適用により、日本基準とIFRSとの間に1点大きな差異が生じています。それは、オフィス等の賃貸借契約にIFRS16号が適用される点です。日本基準において、オフィス等の賃貸借契約に係る、会計処理は、翌月の賃料を前払いした際に、前払費用を計上し、翌月末に先月に計上した前払費用を費用化するというものです。一方、IFRS16号においては、オフィス等の実質的な賃貸借期間(平均入居期間等を参考に算定される。)に渡る賃料総額をリース負債として、計上します。一般的なオフィスの平均入居期間は10年程度であり、IFRS16号における、リース負債額は多額となる場合が多くなります。

 企業価値評価を行う場合、企業が各年で生み出す利益や将来キャッシュフローの総額から、有利子負債の金額を引くことで企業価値を算定する事があります。この際の有利子負債には、借入金だけでなく、リース負債も含みます。IFRS16号においては、日本基準におけるリース負債よりも多額となる事が一般的であるため、採用する会計基準の違いにより、企業価値が大きく変わってしまう事になります。

 日本法人の企業価値評価を行う際、IFRSを採用する国の人が企業価値算定書を使用する場合、IFRS16号を適用した場合の財務諸表を作成した方がよい場合があるかもしれません。なお、日本基準においても、IFRS16号と同じ内容の会計基準への改正が検討されております。

 

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